姑獲鳥の夏はすごく広い意味での叙述トリック作品です。
「妖怪というものは超常現象を人が理解するためのツールである」
という解釈が展開され、それが完成されるときにトリックもまた完成される、というおそらく今まで誰も為し得なかったミステリを京極夏彦はつくりあげました。

なによりすごいのは、これがメタミステリではないということ。
メタミステリというのが、ミステリを再構築することならば、これはミステリの枠そのものに対して無自覚です。無自覚に無視しています。
その点で生粋のミステリ好きには嫌われます。

確かに表層だけを追っていけば、なんだそりゃ、てな感じにとれないことはないトリックですが、これはコロンブスの卵です。解釈による世界認識によってトリックを作るなんて、まともな作家にはできませんよ。

これがコロンブスの卵だと気づけるかどうか。面白さではこの後に続くシリーズもひけをとっていませんが、ミステリとしての存在感は傑出しています。
だいたい、これだけネタばらしてもまったく意味わかんないでしょ?

ISBN:4062638878 文庫 京極 夏彦 講談社 1998/09 ¥840

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