けっこう面白かった。
良かった点を2点挙げてみたい。

一つは、この小説全体に独特の不思議なリズムみたいなものがあること。
作者があとがきで、今でも自分が高校に通う夢を見る、と言っているのを読んでとても納得した。そんな夢の中の話のようなリズム。

二つ目は、構成がとても綺麗であること。
この話は5人の視点で一つの事件の側面を語られている。最初の視点、啓司は、ブギーポップとの出会いによって「人類に危機が迫っている」ことを知り、また、それがいつの間にか「すべて解決」していることを知らされる。
完全に蚊帳の外だった啓司の視点から、視点が変わるたびに、ひとつひとつ薄皮を剥くように「何が終わったか」を読者も知らされてゆく。

さすがにそれなりに名の通った作品らしく、読ませる力は充分。
ただ欲を言えば、中・後半部分まで読めばだいたいどんなことが起きたかは把握できてしまい、肝心の事件のところにサスペンスを感じられないのが残念。サスペンスを最後まで引っ張るトリックの一つでもあればよかったのに、とは思う。

ISBN:4840208042 文庫 上遠野 浩平 メディアワークス 1998/02 ¥578

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