西之園萌絵と犀川創平のその後が見られる新シリーズ。
ぶっちゃけミステリとしていまいち。あと「髪にピンクのメッシュを入れた知的な美人」ってゆう設定がどうしても腑に落ちない。なぜなら見たことないから。
でもこうやってキャラクターが代わってゆくときにそれまでのキャラと一緒に登場させて新旧のファンをとりこんでゆくというのはいいですね。
シリーズ作品にちまちま出てくるウルトラセブンしかり、今年の年末のドラえもんの声優しかり。

ISBN:4061823922 新書 森 博嗣 講談社 2004/09/10 ¥861

星を継ぐもの

2004年12月6日 小説
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。

とまあこれはアマゾンから。

言わずと知れた歴史的名作。なによりタイトルが抜群にかっこいい。
月にあった死体(ほぼ人間)がどこから来たのかをめぐって喧喧諤諤の議論が壮大なスケールに広がってゆく様は背筋がぞくっとするほど。
そして現世人類とのつながりがリンクする瞬間は美しいとしかいいようがない。
仮説・検証っておもしろそうだなー、科学者って楽しそうだなー、とおもった一作。

ISBN:448866301X 文庫 池 央耿 東京創元社 1980/05 ¥693

蒲田行進曲

2004年12月5日 演劇
つかの芝居ってほんとうに冷酷でシステマティックで感心してしまいます。
実際どの芝居でも内容なんてほとんどあってないようなもので、さっき言ったことの反対を平気で言ったりして混乱させて、観客が理詰めで物を考えられなくなったころに大きな音楽や熱い台詞なんか聞かせて感動させます。


人間が他人の話から受ける印象のうち、内容に関するものはたった7%しかないそうです。
あとの93%はその人の話し方だったりビジュアルだったりするそうで、「人は他人の話なんか聞いていない」ということを熟知したつかこうへいという人は、芝居つくりのプロフェッショナルというにふさわしい人だと思います。

ISBN:4048729926 単行本 つか こうへい 角川書店 1996/10 ¥1,325
村上龍という人は異端の作家とか文豪とか駄作が多いとか言われてきていてカテゴライズされにくい人ですが、この人がやっていることは初期の作品を除いてずっと一つです。
それは
「コミュニケーションをとるということは一般に考えられているよりずっと難しい、ということを伝えること」
です。

この本はいろいろなシチュエーションにおいてどのようにeメールを書いたらよいかわかると同時に、文字・言葉のコミュニケーションを試しつづけた稀有な作家の中間到達点をすっきりとした形でみせてくれる良書です。

ISBN:4087201198 新書 村上 龍 集英社 2001/11 ¥693
この人は東京駅の設計をした建築家ですね。
えらい高かったんですけど写真が綺麗だったんで無理して買ってみました。
フランク・ロイド・ライトの写真集の中で一番いいショットが多いんじゃないかな。
建築や美術好きにはあまりにもベタで敬遠されるらしいけど、私はこの人が一番好き(少ない知識の中では)。

ISBN:4306043843 単行本(ソフトカバー) 大木 順子 鹿島出版会 1999/06 ¥3,360
戯言シリーズ番外編。
地の文が本編と違って「いーちゃん」の一人称ではないので文の感じがだいぶ落ち着いた感じです。落ち着いたというか洗練されてきたというか。
いつもの戯言より、「家族を大事にしない人は―不合格です。」
というこの話のほうが好き。

西尾維新固め打ち。さすがにしんどくなってきたので(絵面的にも)そろそろやめとこうかと思います。

ISBN:4061823590 新書 西尾 維新 講談社 2004/02/06 ¥1,365
西尾維新戯言シリーズ第5弾。
ほぼトリックなしの豪腕炸裂。
個人的には『クビシメロマンチスト』に匹敵する傑作だと思います。
この人の本はいつも文章力に物をいわせた物語ばかりでミステリって範疇じゃないんじゃない?といぶかしんでましたが、これではっきり分かりました。
豪腕物語作家だ。
そのへんがちょっと京極夏彦に似ている。若いのに。
30代になったらどんなの書くんだろう?

ISBN:406182323X 新書 西尾 維新 講談社 2003/07 ¥1,260
西尾維新戯言シリーズ第4弾下巻。
「ちまちましたトリックなんぞ誰が使うか!」てな男らしい感もある解決編。
本当にこの人の書くものは、犯罪者とか殺人鬼とか平気で出てきて捕まらないし、読者の心理の裏をかくことだけでミステリを成立させています。
誰も言わないけどこの人は豪腕作家です。
シリーズが進むたびにいろんな登場人物が出てきて、その回想なんかもあるんだけど、ネタバレぎりぎりでやれてるところにも感心。
ストーリーとは関係ないところでどんどん綱渡りなかんじになりつつあります。要注目。

ISBN:4061822845 新書 西尾 維新 講談社 2002/11 ¥924
西尾維新戯言シリーズ第4弾上巻。
山奥の研究室で起こる密室殺人事件。
事件が起こるまでが上巻の範囲です。
トリックに特にこだわらず(ように見える)、戯言と意外性のあるどんでん返しで読者をけむに巻こうとする西尾維新の本のタイトルとして「サイコロジカル」はぴったりに思えます。

ISBN:4061822837 新書 西尾 維新 講談社 2002/11 ¥882
西尾維新戯言シリーズ第3弾。
本作はインターミッションといったかんじ。200ページ足らずの薄い本だし。
前作までとはまったく違うテンションで、楽屋落ちみたいなのも結構出てくるのでこれを最初に読むのはやめといた方がいいんじゃないかな。
でもこういうのが書ける作家は息が長いだろうなー、とも思いました。

ISBN:4061822675 新書 西尾 維新 講談社 2002/08 ¥819

落日燃ゆ

2004年11月26日 小説
東京裁判において、A級戦犯として絞首刑に処されたただ一人の文官、広田弘毅の生涯を追った小説です。

城山三郎の本に駄作はありませんが、その中でもこれは特に熱のこもった作品です。
熱がこもっているといっても、文体はとても抑えられていて淡々と話は進んでゆきます。広田弘毅の人格の高潔さ、吉田茂の稚気が物語を(つまりは敗戦直後の日本を)くっきりと際立てせています。
読むと特に吉田茂にシンパシーを感じてしまいます。

ISBN:4103108142 単行本 城山 三郎 新潮社 2002/03 ¥2,520
ちまたで有名店だとか言われてる店にいってご飯食べてきて、「まずかった」って言ってるまんがです。

リアルタイムで読んでたときに、すごい面白いと思ってたんですけど、読み直してみると最近の本(毎日かあさんとか鳥頭紀行)のほうが面白いですね。
西原理恵子はほんとうに成長する人なんですね。

ISBN:4022568992 単行本(ソフトカバー) 西原 理恵子 朝日新聞社 1995/09 ¥1,020
西尾維新戯言シリーズ第2弾。
面白いのは確か。
文章力・物語の構成力が20歳としては異常に高い。ただそのぶん文章の中にただよってる青臭さとか自意識の過剰さが逆に気になるのが残念。せっかくこれだけの能力があるんだから、「死」とか「他人とのかかわり」に対する見識なんか前面に出さずにもっと突き放して書いてくれたらいいのに、と思います。
でも面白いのは確か。

ISBN:4061822500 新書 西尾 維新 講談社 2002/05 ¥1,029

長崎オランダ村

2004年11月23日 小説
村上龍の作品の中ではかなりうずもれてる感のある本作ですが、個人的にはベスト10に入れていい物なんじゃないかと思っています。

内容をざっくり説明しますと、村上龍の分身であるケンが、実家のある佐世保に戻って旧友のナカムラと会います。
ナカムラは長崎オランダ村のイベンターをやっていて、そのときの苦労話なんかを美味しいものを食べながら語ってくれます。

・・・・・だけ。これで小説になるんか?てな内容ですが、充分なってます。
小説の中で、いろんな国の人たちが長崎に出稼ぎにやってきて、それぞれの国の流儀を固く守って、それぞれ勝手に恋をしたりさみしくなったりしています。ナカムラはイベントの最終日になんとかみんなでもりあがろうと考え、ある歌をうたいます。『let it be』
世界中の人が知っているこの曲を、いろんな国籍をもつ人たちがそれぞれに、思い思いに一つの曲を歌うのを見ていてナカムラは「ビートルズとはこのようなバンドだったのだ」と気づきます。
名シーンだと思います。

ISBN:4062630397 文庫 村上 龍 講談社 1995/08 ¥368

超人計画

2004年11月22日 エッセイ
「ダメ人間改造計画=『超人計画』とタイトルを決めた時点で、構想としては"超人になるぞ"と決意した僕が、バイトなどをして超人になろうとすると、そのたびにオチがつくという体験エッセーになるはずだったんです。・・・・・ 」

と、Yahoo!のインタビューです。
これを読んで何でこの人がひきこもりになったかわかりました。

いきなり超人になろうとせずに、普通の人になろうとすればいいのに。

この人の本は全部読んでますが、何か一気に飛び越えようとする気持ちが強すぎるんじゃないでしょうか。
ただ、そのへんの一気に何かを変えたいという気持ちが、怨念のような情熱になって、小説のクオリティを上げていると思います。
でも人生しんどいでしょうね、小説家としては良くても。

ISBN:4048734814 単行本 日下 潤一 角川書店 2003/07/28 ¥1,365
姑獲鳥の夏はすごく広い意味での叙述トリック作品です。
「妖怪というものは超常現象を人が理解するためのツールである」
という解釈が展開され、それが完成されるときにトリックもまた完成される、というおそらく今まで誰も為し得なかったミステリを京極夏彦はつくりあげました。

なによりすごいのは、これがメタミステリではないということ。
メタミステリというのが、ミステリを再構築することならば、これはミステリの枠そのものに対して無自覚です。無自覚に無視しています。
その点で生粋のミステリ好きには嫌われます。

確かに表層だけを追っていけば、なんだそりゃ、てな感じにとれないことはないトリックですが、これはコロンブスの卵です。解釈による世界認識によってトリックを作るなんて、まともな作家にはできませんよ。

これがコロンブスの卵だと気づけるかどうか。面白さではこの後に続くシリーズもひけをとっていませんが、ミステリとしての存在感は傑出しています。
だいたい、これだけネタばらしてもまったく意味わかんないでしょ?

ISBN:4062638878 文庫 京極 夏彦 講談社 1998/09 ¥840
えらい面白い本ですよ、これは。
ハイパーネットというITベンチャーの雄がどのように上り詰め、落ちていったかを社長みずからが語っています。
この本を読んでいてすごいな、と思ったのは、筆者(板倉さん)が自分が落ちていく過程をものすごく冷静に書けてる、ということ。
また、意識してかしてないのか、上り詰めている段階ですでに崩壊の目が文章の端々に現れており、それがどのように倒産へと結びついていくのか、手に汗にぎりながらページを先に繰っていってしまいます。
事実は小説より奇なり、とは言いますがやっぱり本物の迫力はすごい。単純に企業サスペンスとしても読める秀作です。

ISBN:4822241300 単行本 板倉 雄一郎 日経BP社 1998/11 ¥1,680

三国志

2004年11月17日 漫画
三国志を全巻通して読んでみた。全巻読んでみた感想として、もし三国志の登場人物になるなら劉禅になりたいと思った。

ISBN:426701468X 文庫 横山 光輝 潮出版社 2000/01 ¥680
欽ちゃん自身はおもしろくないけど、欽ちゃんの書いた本は面白い。
何といっても、笑いに対する姿勢がおもしろい。
彼は「笑い」というものを完全にパターン化、記号化しようとしてます。

欽ちゃん劇団では笑いの「間」に対する指導が厳しく、確実に10秒をおいて反応しなくてはならないそうで(たしか)、欽ちゃんの秘蔵っこであるはしのえみはどんな状況でもきっちり10秒の間をおくことができるそうです。テレビの番組で検証してました。確かにはしのえみは1秒の狂いもなく間を置いていました。

あの笑いのサイボーグを作ろうとしている欽ちゃんの陰謀はもっともっといじれるんじゃないか、もっといじったらいいのに、と思うわけです。

ISBN:447939074X 単行本(ソフトカバー) 斎藤 明美 大和書房 1999/10 ¥1,470

礼儀作法入門

2004年11月14日 エッセイ
ダンディな大人の作家、というときだいたい一般的にイメージされるのは北方謙三とかハードボイルド作家なんじゃないかな、と思いますが、私にとってのダンディのお手本は山口瞳なんです。
世間に迷惑をかけない、でも大衆がすることに乗ったりはしない。ダンディだと認識されたいとも思わない。
「礼儀の基本は健康であること」という山口瞳の見解はとてもしびれます。大人だなぁ。

ISBN:4101111308 文庫 山口 瞳 新潮社 2000/03 ¥420

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